深部静脈血栓症とは
腕や脚の静脈は、大きく分けて、皮膚のすぐ下を流れる静脈(表在静脈)と、骨盤や筋肉の中を流れる静脈(深部静脈)の2つがあります。この深部静脈に血栓(固まった血液)ができる病気を、深部静脈血栓症といいます。大部分の血栓は下肢に発生します。どういう原因で起きるの?
深部静脈血栓症の危険因子(発症の原因になりうる状態)には様々なものがあり、また、複数の因子が組み合わされて発症する場合も多くあります。代表的なものでは、長時間の旅行などによって座った状態を続けた場合や、脱水、妊娠、出産、悪性腫瘍、外傷、骨折、手術、長期間の臥床(寝た状態)、などがあげられます。ホルモン剤や、経口避妊薬なども危険因子のひとつです。また、血栓症の患者さんの検査をしてみると、先天的に血栓のできやすい素因を持っている場合もあります。どういう症状があるの?
発症初期は、血栓が生じた下肢の、腫れ、痛み、色調変化(青紫になることが多いです)がみられます。症状は比較的急激に起こることが多く、いつからの発症か、患者さん自身が覚えていることが多いのも特徴です(1日前に新幹線で旅行した時に、椅子から立ち上がった後から左ふくらはぎが腫れて痛い、など)。血栓の状態によっては、自覚症状があまり見られない場合や、症状の程度が軽い場合もあります。どうして治療しなければならないの?
深部静脈に生じた血栓は、その一部または全部が、血流によって運ばれることで、肺の血管に詰まってしまう状態(肺塞栓症)を発症することがあります。無症状の場合もありますが、場合によっては、ほぼ即死に至ることもある怖い病気です。また、心臓の隔壁に先天的に交通がある病気を持っている場合は、血栓が動脈に飛んで、脳梗塞などを発症する場合もあります(奇異性脳塞栓症)。こうした状態をできるだけ避けるためにも、早期からの治療が重要です。どんなふうに診察するの?
症状をお伺いした上で、脚の診察を行います。疑いがある場合には、超音波検査で血管の状態を確認し、診断をつけます。診断と治療方針の決定のために採血も行います。診察の後、病気の状態、治療方針についてご説明します。どういう治療があるの?
急性期(発症からおおむね14日以内)であれば、抗凝固薬による薬物治療を行います。多くの場合は、飲み薬の治療で、外来通院が可能な場合もあります。患者さんの状態によって、一時的に点滴や皮下注射での投与が必要になる場合もありますので、その場合にはご説明いたします。血栓や患者さんの状態にもよりますが、最低でも3ヶ月以上の飲み薬の継続が必要になります。また、脚を圧迫する弾性ストッキングの治療も重要です。着用方法、購入については、外来でご説明します。慢性期(急性期以降)に受診された場合は、薬物治療を行わずに、弾性ストッキングによる圧迫療法のみを行う場合もあります。ストッキングは、最低でも2年以上の着用継続が必要です。